音響設計の基礎知識、残響時間について

「残響時間」という言葉を聞いたことがありますか? 残響時間とは、音が鳴り終わったあとに残る「残響」の響き具合を評価するための指標のことです。ここでは、残響時間について詳しく説明していきます。残響時間の概念を理解したうえで、音楽を聴くことに適している空間を作っていきましょう。

「残響」と「残響時間」とは

残響とは、音源の振動が止まった後も聞こえる音の響きのことで、空間内で音が反射し合うことなどが原因で発生します。狭い空間のほうが音の跳ね返りが早いため、お風呂などの狭い部屋で起こりやすく、反対に広い部屋や、吸音がしっかりされている部屋では起こりにくい現象です。

そして、この残響の具合を評価するために、残響時間という指標を使います。残響時間は、「残響音が無くなるまでにかかる時間」のことだと思われがちですが、実際には「残響音が60dB減衰するまでにかかる時間」のことを指しています。

残響時間は長ければ、それだけ多くの響きが得られますが、音の明瞭度が落ちてしまいます。残響時間は音の聞こえやすさを保ったうえで、心地よく感じる長さであることが理想的です。

残響と反響の違い

反響は「エコー」とも呼ばれており、直接音(音源から耳に直接聞こえる音)と、反射音(物質にぶつかって聞こえる音)を区別して聞くことができる音を指します。

それに対して残響は、直接音と反射音の区別がつかず、音が繰り返されているのか判断できません。やまびこやこだまなどは「反響」、お風呂の声の響きなどは「残響」にあたります。

残響時間の測定方法

残響時間は多くの場合、「サウンドレベルメーター」という騒音計を使って測定します。ピストルの発射音などを音源として、残響が衰退していく時間を計測します。

また、室内の残響音は数式を使って求めることもあり、音楽音響学という分野で使われています。代表的な数式としては「Sabine の残響式」、「Eyring の残響式」があります。

最適な残響時間は?

最適な残響時間は場所や状況によって変化しますが、多くの場合、空間の大きさに対しての残響時間の最適な数値を割り出すことで、その最適残響時間を割り出すことになります。例えば小さい空間では残響を短くし、大き目の空間であれば長めの残響がちょうどいいとされています。

実際に聞いてみて心地いいかどうかという感覚地を頼りにするのもひとつの手ですが、不特定多数の人が利用する施設であったり、ごく一般的なオーディオ機器を使っていたりしている場合は、部屋の広さに対する残響時間を定めるといいでしょう。

以上、残響時間についてご説明しました。残響とは音を聞く空間にはなくてはならない存在でありながら、音が明瞭に聞こえなくなるリスクもあるため、最適な時間にすることが大切です。その建物や部屋の目的に合わせて、慎重に最適残響時間を設計しましょう。