一戸建てとマンションでのピアノの防音対策の違い

マンションと一戸建て、どちらでもピアノの防音対策ができるのか心配な方はいらっしゃるのではないでしょうか。結論を申し上げますと、マンション、一戸建てどちらの住宅に住んでいても、防音対策は可能です。ここでは、一戸建てにお住まいの方、マンションにお住まいの方、それぞれの防音対策の違いについてご紹介します。

ピアノの防音対策は2つの音の対策が必要


防音対策を考えるときに、まず押さえておきたのが「音には伝わり方によって2つの種類がある」ということです。

ひとつは「空気伝搬音」といい、ピアノでいえば、鳴らした音が空気を通して伝わっていきます。室内で聞こえることはもちろん、空気を通すという性質上、窓やドアの隙間からも漏れていきますし、窓や壁が薄いと、通り抜けてしまう音でもあります。

もうひとつは「固体伝搬音」です。これは、振動が、壁や床、天井などの建材を通して伝わる音のこと。ピアノは楽器本体が床に触れているため、固体伝搬音も発する楽器なのです。打鍵やペダリングの際の振動も、床を通して伝わっていきます。

つまりピアノの防音対策は、「空気伝搬音」「固体伝搬音」の双方について対策が必要ということです。

一戸建てのピアノの防音対策の方法

一戸建ては、マンションと違って建物が近隣から独立しているので、マンションと比較すると、音の伝わり方は弱くなります。しかし、音は空気を伝わって広がるため、近隣住宅への被害は少なからず存在します。では、一戸建ての防音対策はどのような方法があるのでしょうか。

①開口部(ドア、)から漏れる音をシャットダウン

窓は開閉するため、隙間から音が漏れやすくなります。さらに、気密性が低い窓だと、閉めている状態でも隙間が生じてしまうので常に音が漏れている状態になってしまうのです。
このような現象を防ぐために、窓は、元々の窓に加えて防音室の二重窓、計三重に設計し、音を外に漏らさないような施工があります。施工後ももちろん窓を開閉できる状態を保てます。

これだけで50デシベル以上の防音が可能なので、一般的なピアノの音(90デシベル程度)から大きく抑えることができます。
また、入口ドアから漏れる音も対策しなければなりません。元々のドアを反転外開きにし、内側には防音ドアにすることで、自宅内にもピアノの音が軽減できます。
もちろん、近隣へのピアノの音漏れのリスクを減らす意味でも重要なことです。

②盲点になりがちな換気扇

また、外部との通路となりやすいのが換気扇です。窓の様に開閉できるものではなく、防音の観点からすると単なる穴になってしまう場合があるのです。換気扇から伝わる音はよく響き、室内にダイレクトで届いてしまうのです。

この場合、室内からの音を外部に通さないと言う視点ではなく、外部の音を室内に入れない対策方法が有効です。換気扇の通気口部分に「防音チャンバー」と呼ばれる音の入射角を狭めるグッズがあるので、防音チャンバーを取り付けるだけで音を入りにくくすることができます。

これは室内の音を出しにくくする効果も期待できますし、大規模な工事も大幅なスペースも要しません。ピアノがある部屋に換気扇があるご家庭では、手軽にできる対策ではありますが、あくまで簡易的な対策となります。て効果の大きい防音対策です。

マンションでのピアノの防音対策

マンションは近隣と密着した住宅設計のため、高い遮音性が必要となります。新しいマンションでは防音設計がしっかりと取られている場合もありますが、近隣住宅と接している分、物質の振動が原因の騒音トラブルも起きやすくなります。ではマンションの防音対策の具体例としては、どのような方法があるのでしょうか。

①体伝搬音抑える設計

ピアノは地面と接していますし、音は壁や天井を通して聞こえる場合があります。
床への振動を抑えるためには、ピアノを床から離す必要があります。この工法を浮床工法といいます。

ピアノ架台やカーペットは厚ければ厚いほど効果は高くなりますので、架台の場合は10㎝以上の段差を作ると効果的です。また、カーペットやマットはピアノの足の部分だけでなく、脚で踏む鍵盤の下にも敷くとペダルによる個体振動も防ぐことができます。

②防振ゴムを使って振動を吸収する

部屋の設計でも使われる防振ゴムをピアノの足に設置する方法もあります。これも上記の防音対策と同様にピアノ自体の音の振動を他の物質に伝わりにくくする効果があります。ピアノ設置型の防振ゴムの場合、費用が格段におさえられますし、床のキズやピアノの安定性の向上にもつながりますので、非常に便利なグッズです。

③空気伝搬音を抑える設計(マンションでも窓にはご注意)

一戸建ての場合でも固体振動による騒音は起こるのですが、マンションは固体伝搬音は当然のこと空気伝搬音による騒音被害も数多くあります。窓を開け放してピアノを演奏すれば、当然空気を伝わって近隣に届いてしまいます。窓に防音対策を施すことはマンションにおいても効果的です。
いずれの住宅に住んでいても、しっかりと防音したうえでピアノを楽しみましょう。

本格的にピアノの防音対策を行う際におすすめしたい防音室

日常的にピアノを弾く機会が多いのであれば、防音対策としておすすめしたいのは、防音室を設置することです。

既存の部屋の窓、ドア、壁、床、それぞれに対策を施すこともできますが、完全に音を遮断することは難しい面があります。また、部分的な対処をすると、音の響きが変わってしまい、逆にストレスになることも……。
その点、ピアノの音の特性を把握した防音室なら、いつでも好きな時間にピアノを弾くことができますし、大音量で弾いても大丈夫。外から入ってくる音に悩まされることもなくなるので、集中して練習に取り組めることもメリットといってよいでしょう。
実は、防音室を設置した住宅は、資産価値も下がりにくくなるのです。これも、メリットと言えるのではないでしょうか。

ピアノからは、楽器の構造や設置の特性上、「空気伝搬音」「固体伝搬音」という2種類の音が出ます。何も防音対策をしないで弾いているとご近所迷惑になるだけでなく、苦情やトラブルの原因になることも……。安心してピアノを弾くためにも、しっかりと防音対策をしましょう。時間を気にせず、集中して思いっきり弾きたいのであれば、防音室の設置も検討してみてはいかがでしょうか。住宅資産としてプラスの価値になることも嬉しいポイントです。